投壺

WHAT IS TOUHU

投壺とは

矢を壺に投げ入れる、三千年の歴史を持つ中国古来の遊戯。 貴族の礼法として生まれ、礼・譲・克己・立志の精神を所作として体得する 文化的競技です。

ORIGIN

起源

投壺の起源は中国西周時代(紀元前11世紀〜紀元前771年)にさかのぼります。 文献上の最古の記録は『春秋左伝』昭公十二年(紀元前530年)であり、 宴席における貴族の遊戯として記されています。

その起源は射礼(弓矢の礼法)にあります。 宴会の席で弓を射ることが室内では困難なため、 矢を壺に投げ入れる形式へと変化したとされています。 したがって投壺の礼法もまた、射礼の礼法を受け継いでいます。

『礼記』には「投壺」の章が設けられ、 宴席での投壺に際して貴族が遵守すべき礼儀が詳細に記されています。 単なる遊戯ではなく、礼法の実践そのものでした。

春秋左伝・昭公十二年、礼記・投壺篇

HOW TO PLAY

遊び方

投壺の基本的な形式を紹介します。詳細な競技規則については 競技・ルールページをご参照ください。

器材

壺(つぼ)と矢(や)を使います。 壺は細い口を持つ容器で、矢は羽根のない棒状のものを用います。 本協会では儀式用・競技用の2種の壺と、長さの異なる矢を使用します。

投擲

定められた距離から矢を投げ、壺の口に入れることを目指します。 投擲の際は身体を正直に保ち、余計な力を入れず、静かに投じます。 投擲前に明志(志の表明)を行います。

礼法

投擲の前後に相手への礼を行います。 矢が入った場合も入らなかった場合も、所作を乱さず次の投擲に臨みます。 勝敗よりも礼法の実践そのものが投壺の目的です。

SPIRIT OF COURTESY

礼法の精神

投壺は単なる的当て遊戯ではありません。 投擲という行為を通じて、中国伝統の価値観を所作として体得する場です。 『礼記』の射礼より受け継がれた以下の精神が、投壺の根幹をなします。

立志

ASPIRATION

投擲に先立ち、各自の志を言葉で表明する。目標を明確に持つことが、所作の根本となる。

COURTESY

相手への敬意を、言葉と所作によって形として表す。礼は内なる敬意を外に表現する手段である。

DEFERENCE

競う場においても、相手を尊重し、謙遜を保つ。勝敗よりも礼の実践が優先される。

克己

SELF-MASTERY

感情・欲望をコントロールし、乱れず正しい所作を保つ。君子は争わず、自己に克つ。

正直

INTEGRITY

身体を正直(まっすぐ)に保つことが、心の正直さの表れである。姿勢は内面の鏡。

仁愛

BENEVOLENCE

相手の成功を共に喜び、失敗を共に惜しむ。投壺の場は競争ではなく共に学ぶ場である。

礼記・投壺篇、礼記・射義篇

EXPERIENCE TOUHU

三千年の礼法を、
あなたの手で。

投壺文化協会では、投壺の体験会・講習会を定期的に開催しています。 初めての方でも気軽にご参加いただけます。 礼法の精神に触れ、投壺の世界を体験してください。

HISTORY

歴史の流れ

西周

B.C. 11c〜

貴族の礼法として誕生

射礼を起源とし、宴席における礼法の実践として成立。 礼・譲の精神を所作で体現する高貴な遊戯として、貴族社会に根付く。

春秋

B.C. 530年

最古の文献記録

『春秋左伝』昭公十二年に投壺の記録が登場。 『礼記』投壺篇において礼法が体系的に記述される。

秦漢以降

B.C. 221〜

庶民へ広がる

礼崩楽壊の時代を経て、投壺は貴族の礼法から庶民の遊戯へと変容。 唐・宋・明代に各種の規則が加えられ、きわめて複雑な形式に発展した。 宋代の司馬光は『投壺新格』を著し、新たなルール体系を整備した。

周辺諸国

〜 17c

朝鮮・越南・日本へ伝播

中国文化圏を通じて朝鮮半島・越南(ベトナム)・日本にも伝わり、 それぞれの文化的文脈の中で独自の発展を遂げた。

清末

19c〜

衰退・消亡

清朝後期に入ると投壺は急速に衰退し、近代化の波の中でほぼ消亡。 三千年の歴史を持つ文化遊戯が、記録の中にのみその姿を残すこととなった。

現代

2026〜

横浜より復興・競技化へ

特定非営利活動法人 投壺文化協会が横浜に設立。 古典の礼法を忠実に継承しながら、現代スポーツとしての標準化・競技化を目指す。

SPREAD

周辺国への伝播

投壺は中国から周辺諸国へも伝わり、それぞれの文化の中で独自の発展を遂げました。 日本においても文献に記録が残っており、投壺文化協会はその歴史的な繋がりを大切にしながら、 現代における国際的な展開を目指しています。

中国 西周〜清末(本源)
朝鮮半島 宮廷文化として受容
越南(ベトナム) 独自のルール・形式に発展
日本 文献に記録あり・投扇興へ演化